喧嘩を売るなと止められてはいるが、こればっかりは放っておけない
「終刊新潮」とmumur氏のblog*1が震源地になって始まってる辻元氏バッシングですが、下の文(騒ぎの元になったイヴェントの主催者の日記)を読んでいると、バッシングに走る連中に如実に表れているこの国の人間の性に対する狭量さと下衆さ、そして男性にかしづかない女性の存在を認めない風潮に唾を吐きかけたくなる。
http://www.lovepiececlub.com/kitahara/archives/000485.html
●女の働き方
女性議員が増えたことをどう思うか?
相変わらず、そんな質問を受けることが多い。最初のうち、私はぐだぐだだった。「数は増えてよかった・・・でも・・・あの人たちじゃ・・・でも・・・」と。慎重に考えれば考えるほど言葉が濁ってしまっていた。それでもだんだん、なんだか腹が立ってきた。「うるせーなー、なんでそんなこと考えなくちゃなんねーんだよー」完全な逆切れである。だいたいが数が少なすぎるからそんな問いかけを投げられるわけで、もう、質問されている状況そのものが私の敵だ、という気持ちになるのである。大企業に勤める女友達が、刺客についてこんなことを言っていた。
「会社の女性上司と同じ顔をしているんですよ、みんな」
彼女が言うには、男の上司は数が多いからバラエティもあると。ただ女の上司は、驚くくらいに似ている。男に組織に上司に絶対刃向かわない人。それだけ、と。
「本当ですよ。自分の意見を言う女は、見事にはじかれるんです」
キャリアアップを望むのならば男に選ばれなくてはいけない。男に選ばれたいのであれば「積極的に、私はあなたの味方です!」を叫ぶ必要がある。「自分の言葉」を持つなんてもってのほか。そういえばずいぶん前に、「仕事をしたいのに邪魔をされる・・・」とノイローゼ気味になった友達がいた。彼女が会社に履いていったミュールについて「そんなサンダルはいてくるな」というオヤジがおり、そのオヤジと毎日ミュールについての議論を戦わせた・・・というのである。*2「私は仕事がしたいんだ!!!」彼女は絶叫する。しかしオヤジは彼女がサンダルで会社に来る、という一点のみで彼女に仕事をさせなかったのだった。ついに彼女はおれて、ださいパンプスに切り替えた。・・・「自分の意見」なんてレベルじゃなくても、「自分の好きなファッション」というレベルだって、大変な苦労をしている女子社員はいる。世の中にいっぱいいる。男に選ばれる、そつなく選ばれるなんてことは、どんなに大変なことか・・・考えただけで身震いしちゃうよ。
そんな話を聞いて改めて「刺客」と呼ばれた人たちを見る。厚塗りしたファンデーションの下の思いは分からない・・・分からないけれどもこの「本心のわからなさ」みたいなものが男社会で受けるコツなのかもしれないなぁ、と。本心なんかを覗かれたら、男の社会でやっていける女なんて限りなくゼロに近づいてしまうだろう。我慢して我慢して我慢して我慢して・・・そうしたら、やっと道が拓けてくる・・・んだろうか。ああ。
さて。先週末は一年に一度のラブピースクラブのお祭りだった。今年は辻元清美さん、笹野みちるさん、小林万里子さんがいらしてくれた。*3辻元さんには「女が働く」ということについて講演をしてもらった。
多くの女にとって「働く」とは、「男の中で」働く、であることが多い。「オヤジ」的なものの中で、「オヤジ」的なものを駆除しつつ、かつ「オヤジ」的なものとどう折り合いをつけて働けばいいのやら・・・というのは、働く女の共通の悩みだろう。そんなことを辻元さんにはお話して! と依頼していた。超男社会・永田町で自分の言葉を失わず、かつ、言葉の通じないオヤジたちとどのようにつきあい、どのように仕事をしていったのか、結局2年前に「駆逐」されてしまったのは辻元さんの方だったが、それではこれから「どのように」やっていこうとされるのか?
辻元さんはたくさんのお話をしてくださった。
たとえば、今回国会に行くと、「女性刺客をどう思うか?」「小泉さんに久々に会いましたね、どうでした?」とかそんなことばかり聞かれる。誰も政策のことを聞かない。仕事をしたい、またたくさんの法律をつくっていきたいと、腕をぶんぶん振るわしていても、その前の前の前の前の前の前の前の段階でカクンとつまづくようなことばかりである・・・・と。それでも、自分がやりたいことを通すためには、知恵をつけ、「うねうね」と周囲を説得しながらやっていくしかない。「家父長制」的なものに抵抗しつつ「家父長制」の中で生きることの矛盾を私たちは常に抱えている。*4でもその矛盾を責めたところで始まらない。だからこそ、真っ正面からぶつかるだけでなく、うねうねと知恵を使い、自分を「生かす」道を拓いていかなくちゃね、いきたいね・・・そんなお話だった。泣いている人もいた。たくさんの笑いと温かい空気に包まれたお話だった。さて。ご存知の方もいらっしゃると思うが、今週の週刊S腸(敢えて)に女祭のことが書かれている。辻元さんが「アダルトグッズショップ」で講演したことがなんと2ページの大きな記事になっている。女祭に来ていたんだね、週刊S腸の女子編集者。いやいや、まいりましたー。ちなみに、女祭の翌々日、週刊S腸の女子編集者はラブピースクラブにも突然やってきたらしい。来たらしい、というのはあいにく私がお昼に出ていなかったからなんだけど、対応したスタッフによれば
「バイブを買いに来たにしてはすごく下品な感じで何だろうって思ってたら・・・いきなり大きな声で辻元さんがどうのこうのって・・・。すっごくきちんとお化粧していて怖かった」とのこと。
「下品」とはもちろん週刊S腸に対する偏見を含んだそのスタッフの主観だけれども、少なくとも玄関先でとってもキレイに化粧をした女の人が「紫色の大きなバイブに辻元さんがサインしたのは云々かんぬん・・・」とか大きな声で言う姿は怖いし・・・そんな下品なお客様は確かに・・・いない。「紫色の大きなバイブ・・・って・・・辻元さんがサインしてくれたあの可愛いピンク色の指サイズのバイブのことかなぁ・・・」とみんなで首をひねる。エロい視線でみると、ピンクが紫に、ただのスティックがでかいチンコに見える・・・んだろうか。
彼女の仕事は週刊S腸的な記事を書くこと。「女祭」に潜入するのもお仕事ならばラブピースクラブに乗り込んで「バイブ!」と叫ぶのもお仕事だ。それにしても自分の考えや意向でなく「組織の意向」で動くと人はよりラジカルになるものだなぁ、と実感させられた出来事になった。迷いがないものね。ピンクは紫! バイブはチンコ! 辻元悪! うらやましいくらいに、迷いがない。組織の命令となると、妙な使命感と興奮があるから、ぶれないよね。ああ女刺客と同じだなぁ・・・。自分の言葉は持たない、だから、迷わない。
ちなみに私は女性刺客を「批判」しにくいと思っている。それはやっぱり組織の意向に刃向かったとたんにはじかれるのは女、才能が際だったところではじかれるのも女、そんな例をたくさん見ているから・・・。だからこそ「私だけが例外」とばかりに率先して男組織に従順に頑張る女をみると、痛々しい思いが先になって刺せない。そういう意味で、週刊S腸の女子編集者もそうとうに痛々しい。(私怨じゃないだろうしねぇ) もちろん、他人様を痛々しいということによって自分を安全地帯に置こうとしている私自身も痛々しい。こうやっていくとね、痛くない女なんていなくなるんだよ。みんな痛い。女である限り、痛い痛い、痛い! のだと私は思う。だけど敢えて言うならば、一番痛いのは、男に認めてもらいたい女だ。男のための「使命感」を持つ女だ。
男に選ばれる道を行く限り、女が抱える痛さと不幸の種類はいつも同じところで淀んでいる。仕事をする女がそんな痛々しさを抱えていていいはずがないよ、と思うんだけどね。しっかし。。。。バイブ、アダルトグッズ・・・というだけでどれだけのエロい想像力を働かせてくれているのか見物ですよ。オヤジを喜ばすコツいっぱい。週刊S腸、立ち読みしてみてください。
まぁ、「流れに乗れない」男に取っても、今の社会・特に会社社会でにこやかにやることは苦痛以外の何者でもないんですけどね。
私が一番憎悪するのは、男女問わず、組織や社会の「常識」を疑わず、それを押しつけ、それに対して「でもぉ…」などとか細く声を上げただけで何時間もガミガミとお説教を垂れる人。*5
それはともかく、何だか新潮とネット右翼がタッグを組んで革新的かつ精神的に自由な左翼政治家を叩くという異様な雰囲気が目に付きます。
ネット右翼が辻元を叩くのは「でしゃばった女」「確信犯の左翼」だってこともあるんだろうけど、それ以上に、ネット右翼や新潮的な人々が安穏と出来る今の支配構造をブチ壊すだけの信念とバイタリティに溢れた人間である事が大きいのでしょうね。
彼らは男女関係なく…と言うよりは女であることを加点してヒステリックに叩く。
アナーキーは25年前に団地のオバサン連中の事を「自慢話と陰口ばかり」「欲求不満のクソババァ」と喝破したけど、ネット右翼や新潮的な人達も非常に欲求不満がたまってるのでしょうね。
欲求不満のはけ口を他人の足を引っ張るのに向けるのは反則だと思いますけどね。
*1:http://blog.livedoor.jp/mumur/
*2:Artane.注:男性に対してもそういう下らない事で仕事の邪魔をする「上司」は結構いる。営業でもパーティでもないのに背広に革靴でなきゃイカン、ジーンズなどもってのほか。と言う「上司」がのさばる所ほど職場の雰囲気が窮屈で仕事に関係のないことに上司が介入してきて仕事がやりにくい所が多い
*3:Artane.注:この面子は非常に「濃い」。性解放運動の筋を知っている人ならば、彼女たちがかなりアグレッシブに性解放を生活の中で実践している人達だと言うのはわかると思う
*4:Artane.注:それは、旧来の会社や組織が偉いとする中で働くことに辛さを感じ、その辛さが何なのか自覚的に考えたことのある男性も考えていることではある
*5:ほんと、頭の中ではTHE STAR CLUBの「SHIT!」が鳴り響いてグーパンチしたくなることすらある