月よお前が悪いから…のアーカイブ

http://d.hatena.ne.jp/artane/ がサーバの関係で消えるようなので、アーカイブします。基本更新しません。

竹島(独島)を巡るチキンレース

ここ数日色々な所で盛りあがっている、鳥取県の先の竹島沖を日本側が測量するという問題。
日本側は、

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060420it04.htm

竹島調査、日韓で非公式接触続く…事態の打開厳しい

特集竹島問題

竹島周辺海域で海洋調査を行う予定の海上保安庁の測量船「海洋」と「明洋」は20日午前、鳥取県境港沖で待機を続けた。

政府は調査準備を進める一方、ソウルで大島正太郎韓国大使が潘基文(パン・ギムン)外交通商相と会談するなど、調査に反発する韓国との事態打開に向けた交渉に全力を挙げている。

麻生外相は同日午前の参院外交防衛委員会で、今回の海洋調査について、「国際法上、我々には何らの瑕疵(かし)はない」と述べ、あくまで日本の排他的経済水域EEZ)内での合法的な調査であることを強調した。「不測の事態をなるべく避けたいと思って、平和裏に解決されるよう、外交ベースで交渉が行われている」とも語った。

安倍官房長官も記者会見で、「日韓両国で円満な解決を目指して非公式な接触が行われている。その行方を見守っていきたい」と述べた。

日本政府は、韓国側が6月の国際会議で現地海底の韓国名の名称提案を見送れば、海洋調査を行わない考えを伝えているが、韓国側は強硬姿勢を崩していない。互いがEEZ内と主張している海域に船舶が入る際、事前通報を行う案も提示したが、韓国側は「我々の領土、領海なのに、なぜ通報しなくてはいけないのか」と反発しているという。

政府は20日午後も、外交ルートで韓国側に改めて日本の考え方を伝え、問題解決策を探る予定だ。ただ、事態打開の見通しは厳しく、外務省幹部は「粛々と調査をやることになるのではないか」との見通しを示した。
(2006年4月20日14時24分 読売新聞)

これだけ見ると「冷静な日本vs怒り狂っている韓国」と言う「嫌韓流」のようなステロタイプな見方に陥り兼ねないので、情報分析の基本として、紛争相手国である韓国の新聞の論調も見てみることにします。

【海洋調査】対日強硬策は日本に通用するのか

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/20/20060420000019.html
「静かな対日外交」の行方は?(上)

 盧武鉉ノ・ムヒョン)大統領は18日、与野党代表に面会した場で「独島(日本名:竹島)問題に対する‘静かな外交’路線を見直さなければならない」という主旨の発言をした。盧大統領は「(独島問題を扱ってきた静かな外交という)対応路線をずっと維持していくのかも決めなければならない時点に至ったようだ」と述べた。

◆静かな外交の代案とは?

盧大統領の発言に外交官らは当惑した表情を見せている。独島問題を国際紛争化しようとする日本の意図に巻き込まれないようにしながら、韓国の断固たる態度を見示せる‘静かではない外交’という妙案はなかなか見出せないからだ。

しかし盧大統領の言及に合わせて積極的な独島外交に転換しようとするさまざまなアイディアも出ている。まず立法推進中の北東アジア歴史財団を活用し、独島関連広報刊行物の出刊や独島関連国際会議の開催案などが出ている。国際社会を対象にした広報合戦も話が出ている。

一部では国際司法裁判所を通じた解決についても備えるべきという主張もある。

◆日本に通用する?

盧大統領はこれまで独島問題では‘静かな外交’を行ってきたが、対日外交では常に強攻策をとってきた。18日の発言もそうした脈絡で理解できる。しかし日本もこれに負けずに逆攻勢をしてきたというのが最近の韓日関係だ。一部では盧大統領まで出て最高レベルの警告を送ったのに、日本が調査船を東京から出発させたことをあげて‘静かではない外交’の実効性を疑っている。

去年初めから始まった盧大統領の相次ぐ強攻が日本に通用していないことに関連し、世宗研究所の陳昌洙(ジン・チャンス)研究委員は「日本の中でも韓国政府に対する不満がたまっており、こうした雰囲気が今回の事態を生んだ一因」と話す。

国民大の李元徳(イ・ウォンドク)教授は「日本のどんな陰謀があるのか厳密に見極めなければならない。領土主権を守りたいなら、強い意志を示すことはかえって独島主権を損なうかもしれない」と語った。

イ・ハウォン記者

朝鮮日報

【海洋調査】「実効支配する国が騒ぎ立てるのは珍しい」

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/20/20060420000020.html
「静かな対日外交」の行方は?(下)

◆他国の例

国際的にも実効的領有権を持つ国が騒ぎ立てるのは珍しい、というのも韓国政府の悩みだ。

中国・日本・ロシア間には北方領土4島や尖閣諸島(中国名:釣魚島)紛争があるが、領有権を確保している側は‘静かな外交’で一貫している。これに対する問題提議が出れば各国は相手国大使を呼んで抗議したり、説明書を出すなどの水準で終わる。できるだけ過熱した反応を自制しようと努力しているのだ。それは全て国際紛争化を懸念しているからだ。

慶煕大の金燦奎(キム・チャンギュ)名誉教授は「日本は現在すべての政策検討を終わらせ、ジャブをブンブン飛ばしている状況。これに対し声を上げて反応することこそ観衆を呼び集めることになる」と説明する。

イ・ハウォン記者

朝鮮日報

朝鮮日報の分析に100%同意する訳ではありませんが、日本の最近の領土問題に対する動き・特に竹島に関しては明らかに韓国を挑発する意図が透けて見える。

それ故か、本来ならもっと怒っていても良い筈の韓国のマスコミが、「挑発に乗るな」と諌めようとしているのと較べて、日本のマスコミなどは「今こそ竹島を取り返すべし」と煽っている。

はっきり言って、盧武鉉がどうかという問題はあるのですが、実務者レベルの間では竹島周辺の海域に関しては紛争にしないで解決する道がずっと模索されて来ていたと思うのですが、どうも、日韓のマスコミの論調を比較すると、このタイミングで日本側が竹島を巡る問題を国際紛争に格上げしようと韓国を挑発しているように思えてならない。*1

この手の領土問題に関する日本の最近の強硬姿勢は韓国に対してだけではなく、北方四島にしても、「まずは以前合意した通りに二島返還する」と言うロシアのサインを破棄して強硬姿勢を貫いている訳です。

これは、小泉-安倍外交の大きな失点である訳ですが*2、国内政策としては非常に強硬な姿勢をしていた方が有利ナショナリズムを煽れるし、自分達への支持者を集めるのが楽になる。訳ですが(盧武鉉竹島EEZの問題で強硬姿勢を崩さないのも同じ理由からだと考えられる)、これは明らかに外交・特に領土問題の私物化に他なら無いと思います。

この強硬姿勢がずっとすすめば、日本はアジア・沿海洲地域から完全に孤立してしまう。そちらの方が将来を見据えた戦略上危険な選択だと思うのですが。

*1:ここで韓国が発砲や拿捕などの実力行使に出れば、海保の巡視艇や海自の護衛艦が乗り込んで「奪還」に乗り出してくる訳で、非常な緊張状態にあると考えた方が良い

*2:何故なら相手が譲歩してきているときに相手を張り飛ばして相手の面子を潰しにかかって来ている訳ですから