月よお前が悪いから…のアーカイブ

http://d.hatena.ne.jp/artane/ がサーバの関係で消えるようなので、アーカイブします。基本更新しません。

ゴラン高原の自衛隊にも危険が…

イスラエルと国境を接するゴラン高原の国連監視軍に陸上自衛隊が参加しているはずだよな…と思って調べたら、ありました。
神浦氏のサイト( http://www.kamiura.com/ )の7/29づけのアーティクルに新聞記事の紹介という形で追加情報込でありました。

http://www.kamiura.com/new.html

陸自ゴラン高原PKOレバノン緊迫で行動禁止地域拡大

読売・解説部
勝股秀通記者
(読売 7月29日 朝刊)

[概要]
イスラエルレバノンヒズボラの戦闘が激しくなった7月中旬以降、ゴラン高原イスラエルとシリアの停戦を監視する国連兵力引き離し監視軍(UNDOC 7カ国 約1000人)に、陸自が96年2月から現在も第21次派遣隊43名が輸送業務についている。

現地からは、「宿営地の西方約10キロでロケット弾数発が破裂」「目と鼻の先でミサイルとロケット弾が飛び交っている状況。着弾音は毎日聞こえてくる」(陸自幹部)と報告が入ってくる。戦闘が激しくなった7月中旬以降、UNDOFはイスラエル国内での輸送活動を全面的に中止した。また他の地域で活動中も、防弾チョッキとヘルメットの着用を義務付け、休暇などの公務外外出を中止している。

今回の戦闘でイスラエル軍が国連レバノン暫定施設を空爆し、4人が死亡したが、「シリアのダマスカスと宿営地間の緊急避難ルートは確保されている。今のところ心配していない」(防衛庁幹部)と話す。8月下旬には陸自部隊も半年ごとの交代期を迎え、第22次の派遣が予定されている。

イラクのバクダッド多国籍軍司令部には、空自の輸送を支援するため5人の自衛官が派遣されている。サマワから陸自の撤退が完了しても、まだまだ中東情勢から目が離せない日が続く。

[コメント]
ゴラン高原から陸自部隊は一時的に避難していると思っていたので、この記事に正直驚いた。ゴラン高原イスラエルにとって戦略的要衝で、もしゴラン高原を反イスラエル勢力に奪われれば、イスラエル北部を軍事的な脅威にさらすことになる。ゴラン高原から地中海側を見ると、40キロ程度先にハィファ港と海が見えた。その幅約40キロが加濃(カノン)砲の射程に入り、砲撃によりイスラエル北部が攻撃を受ける訳である。だからゴラン高原をめぐる戦闘は、歴史的に見てもイスラエルの存亡を左右する激しい戦いとなる。逆にシリアはゴラン高原イスラエルに奪われ、ダマスカスを急襲される危険にさらされている。そのためイスラエル、シリア双方が、ゴラン高原の各所に、大量に地雷を敷設した地域が広がっている。

私が訪れた当時であるが、イスラエルがシリアからゴラン高原を奪い、軍事占領した後であっても、シリア側からゲリラが活発に侵入していた。私はゲリラの狙撃を避けるために、マイクロバスの床に伏せて、時速100キロの高速で移動したこともある。もし今後、イスラエルレバノンの国境線に2キロの軍事支配地区を作り、そのために多くの兵力をさけば、ゴラン高原を不安定化するために、ゲリラの再浸透が活発化する可能性がある。だから国連軍による兵力引き離し監視が行われていた。

だからゴラン高原の国連軍(UNDOC)はレバノンでの戦闘が激化しても、ゴラン高原から安易に撤退できないのである。ゴラン高原をめぐる激しい戦闘の再開を誘発するからだ。

ただゴラン高原イスラエル側にはイスラエル人入植者とイスラエル軍、それに日本など7カ国の国連部隊しかいない。いわゆるアラブ人やパレスチナ人は住んでいない。だからイスラエル軍誤爆(あるいは確信)は心配しなくていい。シリアも今の情勢では、イスラエルとの直接対峙は望んでいないと思うので、ゴラン高原ヒズボラなどの浸透を許さないだろう。そのような情勢判断が防衛庁自衛隊にあり、ゴラン高原陸自部隊を避難させないと思う。また22次派遣隊も、予定通り出発させる判断と推測する。ただこれからの第22次派遣隊は、今までにゴラン派遣を経験したベテラン隊員を主に選抜し、緊急の情勢変化に備えることになる。

そういえば、サマワから帰国した陸自隊員からメールが届き、クエートの倉庫にはサマワの宿営地から撤収した大量の医薬品があるという。あの医薬品を空自のC−130輸送機は使えないにしても、外国の民間貨物機でレバノンに緊急移送する方法がないかと書いてきた。イスラエル軍機によって空爆を受けたベイルート空港も再開されたようだ。レバノンの国連職員は無理と思うかも知れないが、日本政府に人道的な措置でクエートの医薬品を緊急援助するように働きかけて欲しい

とはいえ、イスラエル軍・特に空軍の認識は、明らかに「国連軍は敵」と言うものでありますし、アメリカの支援を受けているイスラエルが、これを「いい機会」にしてシリア・イランへ宣戦を広げる可能性は少なくは無いと思いますから、この状況でゴラン高原がどこまで大丈夫なのか…と言うと疑問が残るのですが。