ネトウヨ-自民党-アメリカ右派(2)
ネット右翼が盛り上がったのは一つには2000年11月に中国製ロボット「先行者」が見た目チャチな所からネット右翼系のWEBサイトが茶化して紹介して、ネットユーザの間で一大ブームとなったあたりが一つのターニングポイントになっていますが、この段階では憎悪に結びつくような物というのはそんなに大きくはなくて、「侍魂」「ちゆ12歳」などのニュース系サイトで流布される情報を全て真に受けた人々によって水面下で憎悪が培われ、2001年の後半に一気に爆発し、そんなに政治的な方向性を強く持っていない人までも付和雷同して「左翼叩き」*1が日常化するようになりました。
小泉政権の経済政策が予想通り失敗していく中で自分の不遇を「自虐史観を展開するサヨク」を罵倒し嘲りぶつける形で彼らがストレスを解消すると言うパスの中で、ある突出した右翼思想に搦め捕られていく過程こそが2001年〜2002年前半であったと今見直すと思えます。
ここに、このblogの前身である「Artane.のいびき」*2の2002年1月20日付の原稿があります。
この時の拙い考察ではありますが、いわゆる「ネット右翼」がどのように動いていたかを伺い知るには使えると思うので。*3
北海道立札幌南高校での学園紛争
- 発端は「日の丸・君ヶ世」
を卒業式で強制的に掲揚したり歌わされたりする事に疑問を持った生徒が校長に中止を求めた所、校長が法律で決まっているからまかりならないと強硬につっぱねて学校内で議論が沸騰した事にあります。
- アンケートで過半数が掲揚・斉唱に反対
新聞会がアンケートを取り、有効回収率60%強・内反対84%と言う状況になり、生徒側は再度学校側と交渉を持ちましたが、議論は平行線を辿りました。
~
- 議論を知らせる為に北海道新聞が動き、WEBページが立ち上がった、しかし…
議論を行なっていた掲示板に難癖とも言える書き込みやイヤガラセ書き込みが続出、正常な議論を行なえないと判断した掲示板管理者は問題となる書き込みを削除した上で、メールアドレス明記でないと書き込めなくし、公表に当たってはモデレート(簡単な検閲)を行なうと言う手段にでざるを得なくなりました。
因みに、問題提起をしているWEBページは
http://homepage2.nifty.com/kanda-/ *4
です。
- 「悪の巣窟」(C)kamezo 「2ちゃんねる」のヘイトスレ
や幾つかの草の根「右翼」(彼らを右翼と言うのは、YP体制打倒を標榜し、リベラル右翼を目指している鈴木邦夫先生や故・野村秋介先生に非常に失礼だと思いますが)
の集団の掲示板が、やはりというか連絡場として使われていて、連中が潰しにかかると言う、言わば、札南高校の皆さんが思想闘争に巻き込まれてしまったと言う悲惨な状況に至りました。
非常に嘆かわしい事です。
- 「社会じゃ通用しない」
って何なんでしょう?
- 札幌南高校の掲示板で良く目にした言葉ですが
これほど盲目的で独り善がりの言葉はない。
何故ならば、共同体の中で共同体を改善しながら、みんなが人として尊重されるようにするためのレトリックで使われる言葉ではなく、今のメジャーな社会が気に喰わない言葉や行動を押え込む為のレトリックとしてしか使われていないからです。
- 彼らの言う「社会」とは
今ある価値観や与えられた情報を是とし、それが、事実を経済的な動機によって歪めたと言う基盤に立って成立している事に疑問のかけらも持たない連中の社会であり、何の理想も生きる意味もない、枯れ果てた社会に過ぎないのではないでしょうか?
- そんな「社会」なんて糞にもならない
人が人として見られず、多くの人々は、自分自身が(消費や労働の)奴隷として扱われている事を喜々として受け入れてしまい、自分がどのようにおかれているのか気づかずに、それに気づいて異義を申し立てている人を叩いたり、狂人(電波)呼ばわりして満足しようとする。
~
- 叩いても叩いても魂は満足しない
何故ならば、個人の魂は物事の本質に気づいていて、「心の渇き」などの形で警告を発している。それにも拘らず、「渇いている」が故に叩きに拍車がかかる。
- 解決は魂を見つめ直し身の回りを変える為に努力する事
であると私は考えます。
社会を、今の抑圧と搾取でしか成立していない社会を少しでも変えていく事でしか、人間も満足する事はないと考えるからです。
- そこで色々な人を叩いたり、説教垂れて満足したふりしてる人、やる事他にあるんじゃない?
と結局言いたい訳です。
この事件-札幌南高事件-はネット右翼の最初の最盛期にあったたった一つのエピソードであった訳ですが、ネット右翼はこういう運動を行っているWEBサイトに対して
- 2ちゃんねるの「ニュース速報」などの人の集まるサイトに罵倒エントリーを立てる
- そこで何人かが茶化す上で罵倒する書き込みを行う。
- 攻撃対象を擁護する人が現れるので、これを論理や道理ではなく似たパターンの罵倒の数で圧倒する。
- 流石に疲れた擁護側は撤退する。
- そうすると、ネット右翼側は「論破」したと称して「勝利宣言」を行う。
- この過程は外部のWEBサイト(まとめサイトなどと称される)で大々的に喧伝され、「論破した我々が正しい」とネット社会上での正当性に止まらず、リアルに流布されてる情報は操作されてる。嘘だ。と言うメッセージも伴って強調される。
つまりは、左翼的な人をとことん貶め・動きを妨害し・時にリアルに影響を及ぼすような嫌がらせを日常的に行うと言う「いじめ」と同じような行為が当時のネット社会では大きく容認され、そして先鋭化する事に付和雷同する事自体がネットユーザの承認欲求を満たす。そう言う非常に歪な構図がこの段階で出来上がっていた訳です。