月よお前が悪いから…のアーカイブ

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ウルトラマンメビウスとは一体なんだったのであろうか?

既に最終回からもうすぐ二週間が過ぎて、土曜の夕方が少し足りない気分になっている訳ですが、全体的に秀作だったと思います。
異色のウルトラマンともいわれ、商業的な問題から打ち切りとなったものの熱狂的なファンも又少なくない「ウルトラマンネクサス*1を手がけたスタッフが商業的な担保をかけた上で万全の体制で臨んだ「ウルトラマン伝説」の実写化だった。とまとめてしまえる訳ですが、しかし映画にしてもテレビの方にしてもスポンサーや配球会社が予想しなかった位の「ヒット」になった訳で。
…でも、スタッフから見たら「してやったり」と言う感じでしょうね。

そうなった背景には、「ウルトラ兄弟ウルトラ兄弟のライバル的な怪獣や宇宙人を大胆に絡める」と言う前振りで見てみる気を起こさせた。と言うあたりは確かに小さくないですが、しかしそれだけでは語れないと思います。

一つには、ヒビノ・ミライ=ウルトラマンメビウスが地球に「大事な物」を学びにきてから怪獣が25年ぶりに現れ、それがエンペラー星人の仕組んだ「戦争」であった*2。と言う大河物語の形を最初から最後まで一貫して貫いた上に、次回がどうなるか一週間楽しめるような巧い切り方や煽り方で演出したという事が有ると思います。
これについては、打ち切りが決定した後に再構成された「ネクサス」の最終クールでの次にどうなるかわからない。と言う緊迫感の有る予告が更に拍車をかけたと言う事があると思います。

これ自体を考えてみると、「2ちゃんねる」の特撮板で初期の「リコ編」「溝呂木編」の描写の容赦のなさやウルトラマンがなかなか戦わない。と言う辺りで解釈がわかれて物議を醸して少なくない人が観るのを初期の段階でやめた人が特撮マニアの間でも相当出てしまった状況のなか、「溝呂木編」の後半でそこまでのストーリーがあるテーマを核として一本の道筋を作った「連続ドラマ」であることに気がつく人が現れ、怒涛の22話〜24話*3のあたりから特撮マニアの間で「この作品のハイテンションさは一体なんなんだ?!」と言う形で盛り上がり直して、死という宿命を背負いながら戦う影山千樹憐=ジュネッスブルーの物語へと引き継がれ、その中で「闇」の本当の正体は一体何か?!と言う大きな謎かけが更に仕掛けられた。と言う巧妙なシリーズ構成が「ネクサス」と言う作品自体を再評価させるきっかけになったし、
宣伝がされなさすぎて興行的には失敗したものの、口コミでDVDやビデオがヒットした映画版「ULTRAMAN*4との世界観のつながりが、それに拍車をかけた。と言うあたりから「この大河ドラマ路線は、表現さえ気を付ければウルトラマンと言う作品をヒットさせることが出来る」と言うスタッフの自信へとつながった部分が大きかったと思います。

で、それを更に盛り上げたのは、

  • 一つにはこれまた拒絶する人とはまる人に評価が二分してしまった、板野一郎氏が監修したウルトラマンや防衛チーム=ナイトレイダーの戦いへの大胆なアニメーション的な表現を施したCGアニメの導入であり、
  • もう一つにはナイトレイダー隊員とウルトラマンデュナミスト達が、最初は相互に不信であったのが闇との戦いを経て、信頼できる「仲間」へとなっていく「絆」の深化と言う裏テーマの表現や演出の巧さ

にあったのではないかと思います。


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これらの要素を踏まえて、「ネクサス」に携わったメインスタッフたちは用意周到にストーリーや演出を練り込んだ上で「ウルトラマンメビウス」の制作にとりかかった部分が大きかったと私は思っています。

メビウス」自体は、1話で全滅した防衛チーム=GREW GUYSのただ一人の生き残り*5であるアイハラ・リュウとその怪獣を倒すために25年ぶりに現れたウルトラマン=ヒビノ・ミライの出会い・特にウルトラマンの戦いによって街が破壊された事に対するやり場のない怒りをリュウウルトラマンメビウスにぶつけ、ミライがCREW GUYSの隊員として入ってくることで終わる一話の時点から、「ウルトラマンと防衛隊との関係とはどうあるべきか」と言う長年の課題を明確に提示し、2話でミライが一話で出会った人々をCREW GUYSで一緒に戦おう。と言う風に働きかけて、彼ら彼女らが怪獣と実際に戦う羽目になり、窮地に立たされてオーバーテクノロジーであるメテオールを使用する必要に迫られ、CREW GUYSに正式に加入することを決意して*6ウルトラマンと共に戦って辛くも勝ち抜いた2話の時点で外濠が埋めきられていたと思います。
そういう中で謎がさらなる謎を呼ぶ前半のストーリーへとつながり、その中で、ウルトラマンとCREW GUYS関係者の間に強い友情ともいえる絆ができ、
そして、「ウルトラマンエース」での仇敵であったヤプール人が復讐のために復活したことに始まり、謎のロボット・インぺライザーの襲撃でCREW GUYS隊員に自らの正体をばらさざるを得なくなったミライ*7CREW GUYSの一隊員のウルトラマンとして共に怪獣や侵略者と戦っていく中盤へとつながると思います。
そして終盤、エンペラー星人のさしがねで「四天王」がウルトラマンとGUYS、そして人間たちの間を分断しようと策略をはたらかせるものの、「策士策に溺れる」形となり、ウルトラマンたち*8メビウス・そしてCREW GUYSとが協力して戦わなければ勝つことがができなかったと言う形で絆を深め、最後に痺れを切らせて地球をつぶしてでもウルトラマンたちを壊滅させようとして地球に「降臨」したエンペラー星人=このドラマの悪の黒幕がGUYS JAPANを壊滅寸前に追い込む絶望的な状況のなか、過去に関わった宇宙人たちの友情からの助けによって生き残り、そして過去のウルトラマンたちの呼びかけによってCREW GUYSの全員が満身創痍のウルトラマンメビウスと一つになって戦い、ゾフィも加わり、「最後のメテオール」の助けによって「闇の帝王」であったエンペラー星人を光に変えて倒す。と言う意外な結末*9へと導いていくわけですが、
この中でのメテオールは、ウルトラマンたちの願いに人類が答えるために作られたものだ」と言うサコミズ総監=実はゾフィの友人…にして、ゾフィが地球でメビウスと一緒に戦うための「隊長」となる媒体でもあった…のセリフが、「ウルトラマンメビウス」のテーマを締めくくっているし、見てきた人みんなに、「この作品は何を描きたかったのか、どういうメッセージを訴えたかったのか」と言う点を納得させる締めの言葉でもある訳です。

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ウルトラマンメビウス Volume 7 [DVD]

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結局、こうやって40年に航って繰り広げられた「ウルトラ伝説」は一つの終息を迎えたと思いますし、それが、今後の円谷プロの巨大ヒーロー物にどう反映されていくか…非常に楽しみです。

*1:4/29からCSファミリー劇場で再放送することが決定になりました!!

*2:最初のボガール編とエンペラー星人との間の関連性は直接は描かれていませんが、ヤプールやインぺライザーの絡み方から考えるとボガール自体が地球で暴れるようなきっかけを作ったのはエンペラー星人である。と言う間接的な解釈が成り立つ訳で…筋の読み方としてどうでしょうね?

*3:闇に取り込まれた溝呂木=ダークメフィストウルトラマン=姫矢准が「終焉の地」で決着を付けて、最終的に「光と闇との対消滅」を起こして行方不明になる

*4:ウルトラマンネクサス」の五年前の、最初のウルトラマン航空自衛隊を辞める直前のイーグルドライバー・真木瞬一とスペースビーストの戦いを描いた作品

*5:実際には怪獣に「特攻」して命を落としかけたものの、その瞬間にハンターナイトツルギ=ウルトラマンヒカリに体を乗っ取られて生き延びたセリザワ隊長もいる訳ですが

*6:メテオールを使用する許可をサコミズ隊長の頼み込みによって得て、実際に発動する一連のシーンの話の流れや演出は、未だ「メビウス」を観ていない人も必見…非常に燃えます。

*7:ミライが地球に現れた時点から、サコミズ隊長=実は科学特捜隊の元キャップにしてGUYS JAPANの総監。とミサキ・ユキ総監代行、タケナカ最高総議長などのGUYS上層部はミライの正体を知っていたけど隠蔽していたことが少しづつ描かれてはいた

*8:そう、ここでは過去に地球に来たウルトラマンが客演します

*9:これも、実は「ウルトラマンネクサス」で「闇の帝王」として暴虐の限りを尽くしたものの、操り人形に過ぎない事を知って改心し、最後に自分の力で光を集めてメフィストへと変身し、願いをウルトラマンに托して倒れた溝呂木の最期と共通する泣ける物がある訳ですが