著作権法改悪の動向(続き)
昨日(id:artane:20040731)の続きです。
ネタ元の記事はhttp://www.asahi.com/tech/apc/040729.html に再編集版がWEB掲載されています。
- 著作権法の精神は何処へ?著作物は誰の物か?
私の一貫した意見なのですが、著作物と言うのはコピーされるし、改変されて新しい著作物になるし、批評やパロディされるし、それを妨げる権利は誰にもないと思うし、そういう状況こそが文化の正常な発展でもあると思うのです。*1
ポケモン同人誌事件と言う、たった300部発行されたサトシxピカチュウの同人エロ漫画の著者を京都府警が逮捕して略式起訴に追い込んでしまった事件が1998年の末頃にあったのですが、
この時から著作権法が極めておかしな方向に運用されていると言う認識を持ち始め、そのうち、コンテンツ業者が著作権法の改変や著作権法の無力化に直接介入するようになって危機感を強く持ち始めました。
例えば本だと著作者が受け取る印税は本の価格の一割程度だと言われていますし*2、レコードで実際に演奏しているミュージシャンに入るお金の割合は雀の涙だともいわれています。
「ミュージシャンの実態にも目を」作曲家・穂口雄右さんに聞く
著作権問題というと、どうしても著作権ビジネスの声が目立つが、本来の主役はクリエーター(作家)のはずです。
通常CDの著作権使用料は価格の6%程度。その金額からJASRACが手数料6%を引き、残りが著作権者に支払われます。作家がJASRACと直接契約していればそのまま収入になりますが、音楽出版社に著作権を譲渡しているケースも多い。その場合、使用料は出版社に渡ります。そして、契約によりますが、通常は出版社が3分の1から半分程度を取り、残りを作詞家と作曲家で分けます。
出版社はそうした収入を基に作品のプロモーションをするのですが、問題は契約期間。作品発表から10年で作家に権利を返す契約もあれば、著作権保護期間いっぱい、つまり作家の死後50年まで出版社が権利を持つ契約もある。本当にそんなに長期間プロモートするのか、疑問です。
ほかにも作家がいろいろな事業者と管理契約を結んでいるケースがあり、作家の収入が元の著作権料の数分の1程度になる場合もあります。
権利者としての作家の意識が全般に低いのは事実です。でも知的財産立国をいうなら、演奏家も含めたミュージシャン全体の収入や暮らしの実態、それを支える制度にもっと注意を払ってほしいと思います。
コピーについて個人的な理想をいえば、音楽はいくら複製してもかまわない。ただで聴きたい人は聴けばいい。逆に払いたい人は払いたいだけ払う。例えば私はスティーリー・ダンにはいくら払っても惜しくない。音楽ダウンロードサイトに寄付金ボタンがあって、直接ミュージシャンに払えるならいいと思いますね。実際にはそれはまだ無理なので、私的録音補償金などを拡充するのが現実的でしょう。
(ほぐち・ゆうすけ キャンディーズの「春一番」などの作詞・作曲者として有名。JASRAC評議員。アムバックスグループ会長)
このような状況で著作物を実際に作っている人達を動かしているのは表現すると言う行為への熱意や執着であると思うし、
逆にいうと、コンテンツ業者は彼らの熱意を不当に搾取し、しかも著作権法改定への直接介入や著作権管理という名のコピー制限で消費者からも不当に搾取している。
テーマ2 次の著作権法改正のターゲットは パソコンやiPodへの新規課金か
日本盤音楽CDの生産実績(金額)。1998年をピークに大幅な
減少が続いている。2002年3月にCCCDの導入が始まったが、
歯止めはかかっていない。日本レコード協会調べ(クリックで拡大)MDや音楽用CD-Rなどの音楽専用デジタル媒体や、音楽専用デジタル録音機には、私的録音補償金が価格に上乗せして徴収され、著作権者らに分配される。金額はカタログ価格に対して媒体で約1.5%、機器は約1.3%(上限1000円)。MDの場合、1枚当たり4円強だ。
日本レコード協会はレコード輸入権の次の課題として、私的録画補償金制度の見直しを挙げている。日本音楽著作権協会(JASRAC)も同様だ。
日本レコード協会とJASRACの要望は2つ。まず「緊急の課題」(沼村宏一JASRAC録音部長)として、媒体価格比で決められている補償金額を、1 枚当たりいくらの定額にすることだ。媒体価格が大幅に下落して、補償金の総額が減少しているためだ。「媒体の値段が下がっても、収録される音楽の価値は変わらないはず」と沼村さんは理由を説明する。
2点目が課金対象の拡大だ。今の著作権法では、パソコンやデータ用CD-R/RW、iPodなど「音楽以外に使える汎用機器・媒体」には課金されない。レコード協会やJASRACは、法を改正して対象を拡大するよう求めている。
こうした主張の最大の根拠は、CD-Rへのコピーの蔓延だ。
日本レコード協会は昨秋、東京近郊の12〜69歳 1200人を対象に、過去半年間に何枚のCD-R/RWに音楽をコピーしたかを聞き、1人当たり1.33枚と算出。全国の人口当たりに直して年間約2億 5800万枚のCD-R/RWに音楽がコピーされていると試算した。東京近郊の調査を日本全国に当てはめるのが妥当かどうかはともかく、大変な数字であるには違いない。
日本記録メディア工業会の昨年度の需要統計では、音楽用CD-Rは2500万枚、データ・音楽用CD-RWが2700万枚、データ用CD-Rが4億枚。上記試算と比べると、データ用CD-Rの約半分が音楽コピーに利用されていることになる。
「HDD単体やOSに課金するかどうかなど、議論が難しいのは承知している。けれどデータ用CD-R/RWは緊急の問題だし、iPodなどの携帯用音楽プレーヤーも主な用途が音楽なのだから、課金対象に含めるべきです」(前出・沼村さん)
ここで問題になるのがCCCDの存在だ。例えば市販のDVDビデオソフトはコピーガードがかかっているため私的録画補償金の対象になっていない。日本レコード協会はCCCDを「標準的な音楽用メディアとして引き続き普及促進していく」(03年度「音楽メディアユーザー実態調査」)としている。パソコンや CD-Rに複製できないCCCDを推進しつつ、パソコンやデータ用CD-Rに補償金の適用を要求しているわけだ。矛盾ととられても仕方ないだろう。
実際そのような指摘は表面化し始めている。文化庁によると、補償金の見直しに向けた協議はすでに始まっているが、CCCDに対する疑問の声が機器・媒体メーカー側から寄せられているという。
それはコンテンツが安定して供給されるための担保であると言うコンテンツ供給業者の言い訳がありますが、しかし、ここまでの状況になってしまうと言い訳もまかり通らないと思うのです。
著作権法、及び国際著作権条約にある「著作者の利益を(公共の利益に反しない範囲で)保護し、それを文化の発展に繋げるために著作権を規定する」と言う初心に戻るべき時期がきたのではないかと思うのですが。