月よお前が悪いから…のアーカイブ

http://d.hatena.ne.jp/artane/ がサーバの関係で消えるようなので、アーカイブします。基本更新しません。

H-IIA F-9

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060219k0000m040053000c.html

H2Aロケット:連続打ち上げ成功で宇宙開発陣は歓声

前回の打ち上げからわずか25日。種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)に、再び宇宙開発陣の歓声が響いた。18日午後、センターから打ち上げられたH2Aロケット9号機は、搭載した運輸多目的衛星「MTSAT2」を予定の軌道に投入した。先月24日の8号機に続く短期間での連続打ち上げ成功に、宇宙航空研究開発機構JAXA)などの関係者は国産ロケットの信頼性向上に自信を深めた。

「あまりに順調にいったので、特に申し上げることもありません」。JAXAの遠藤守・プロジェクトマネジャーが記者会見で、こう口にするほど、ほとんどトラブルのない打ち上げだった。

日本の宇宙開発の歴史でも、1カ月に2機の大型ロケットの打ち上げは初挑戦。だが、打ち上げ実施責任者の三戸宰・JAXA理事は「2機を続けて整備することで、作業の習熟度が上がった。作業担当者にはきついことだが、ロケット本体の運用面からは好ましいやり方だったかもしれない」と振り返った。

三戸理事をサポートした責任者代理で、鹿児島宇宙センターの園田昭真所長は、21日に内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)で予定されるM5ロケット8号機の打ち上げに触れ「まだ気が抜けない」と表情を引き締めた。その一方で「現場の人を出来るだけ休ませようと思ったが、どうしても成功させたいという意欲が強かった」と、10月から4カ月間、休日返上で連続打ち上げを成し遂げたスタッフをいたわった。【竹花周】

今回打ち上げた衛星は「兵器から携帯電話まで」の三菱電機取りまとめの「ひまわり7号」(仮称)で、衛星バス部分が国産で占められた初の大型衛星*1であった訳で、軌道に投入された衛星が静止軌道に移り、実際に試験が始まるまでハラハラドキドキな訳ですが、やっとこの分野で日本の工業技術が本格的に実用に供されるというのは技術屋としては非常に興味深い思いを持ってしまいます。

件の/.Jでも書きましたが、これは始まりに過ぎないでしょう。
日本の工業の三度目の転換期…家内制手工業から重工業への遷移、重工業からテレビ・自動車などのマスプロ生産への遷移に続く…に指しかかっている今、この手の極限技術から受ける示唆は非常に大きな物があると思います。

特にJAXA内部でプランが出た「独自技術のカプセルに居る有人宇宙飛行の実現」と言うモノは今後の工業や科学技術の方向を決める上で有用な目標且つ通過点になるのではないかと思います。
人間を乗せて宇宙に飛び立ち地球の周りを一定期間回って地球に戻る…このルートを確実に可能にするには、ロケットの打ち上げ精度を一桁上げるだけでは無く、宇宙船などのハードウェアやソフトウェア、支援体制に至るまで非常にシビアな信頼性が要求されますし、その中で色々な模索や実験も必要になる。

その内容によって、JAXAや取りまとめ企業のみならず、孫請け・曾孫請け・それより末端の町工場に至るまで信頼性確保のノウハウなどや新規技術のノウハウが浸透することになり、コスト重視で品質軽視になりつつある産業を別の方向に導くトリガーになりうるのではないかと言う期待が出来るのではないでしょうか。

今の日本の工業に係わっている企業や人達は少ないパイを奪い合って富をどれだけ溜め込むかに執心している場合が多く、非常にそれは工業だけでなく産業全体が自滅する道であると思うのですが、今の大量販売を安価に行う方向を先端技術や信頼性確保重視の方向に変えてやることで、もちろん当座の内需も期待できるし、長期的に日本の産業をどう方向づければいいのか瞑想している状況にストップがかけられるのではないかと思うのです。*2

*1:/.Jのスレッド http://slashdot.jp/science/article.pl?sid=06/02/18/0924230&threshold=-1 で純国産衛星と書いてしまったら、匿名氏に http://www.geocities.com/jspacetrue/ と言うページの存在をレスされる…実際に観測をするセンサーやアンテナは海外製中心なんですね φ(..)

*2:既に、農業などの第一次産業では後継者不足や政府・企業からの冷遇に多大な危機感を感じて、従事している人達自身が次どう進むべきか模索を始めている