月よお前が悪いから…のアーカイブ

http://d.hatena.ne.jp/artane/ がサーバの関係で消えるようなので、アーカイブします。基本更新しません。

つまりは、軍オタの詭弁に騙されかけていた訳か

http://www.moon.sphere.ne.jp/artane/images-old/fallujah_2004.gif


id:artane:20051109#1131468756 で書いた、「ファルージャ攻略戦で米軍が空中から対人に白リン弾を使って地上で凄惨な被害が出た」と言う話ですが、日本のマスコミでは殆ど取り上げられなかった上に検証がされず、一部の軍オタウヨ厨*1が垂れ流す戦車の発煙弾は白リンを使っていて無害なのだから、対人に白リン弾を使っても無害だと言う嘘がまかり通っていましたが、それに対する反証を詳しく解説しているサイトがありました。

http://teanotwar.blogtribe.org/entry-6d4f530cbedfd6a670e5b76ddb7b7475.html

(要点だけかいつまんで引用)
一方、米軍の説明(「隔月刊 野戦砲兵隊」みたいな、米軍の出してる雑誌)では国務省とは違って:


われわれは白燐を、……煙幕を張る任務で使用し、また、後の戦闘では、塹壕線や偽装蛸壺に潜んでいる反乱勢力に対し、HE(high explosives:高性能爆弾)では効果が見られない場合に、効果的な心理兵器として使用した


と、作戦に当たった米軍将校が説明しています。

この「効果的な心理兵器(potent psychological weapon)」とは何ぞや?という疑問も私にはあるのですが。。。phychological weaponってのは「比喩的に“武器”」という場合に用いられる表現で「それを言ったら相手は何も言えなくなる」ようなもののこと。(例えば冷戦期のソ連アメリカに対して「うちの方が先に宇宙に行ったんだもんね」と言う、プーチンがブレアに対して「おたくはわが国がテロリストとして手配している人物の亡命を受け入れた」と言う、など。「涙は女の武器」なんてのもそうでしょうね。)

米軍がphychological weaponと言う場合はどうやらそれとは少し違っていて、2003年3月の開戦時にバグダードに爆弾を雨あられと注いだあれが「衝撃と畏怖(Shock and Awe)」と名づけられたように、ガツンと一発食らわせて相手のやる気をなくさせるphychological weaponと言うらしいです。

(中略)

また「化学兵器」ですぐに連想されるのはいわゆる毒ガスですが(マスタード・ガス、サリンなど)、WPについてはこういう短い記述がありました。


When WP or P4 is combined with Oxygen, smoke is given off in the form of P2O5 phosphorus pentoxide, actually twice that P4O10.

This is nasty stuff and is lethal.


白燐が酸素と結合すると(つまり「燃焼すると」ってことですよね)、酸化リン(五酸化二リンP2O5→分子が2つで十酸化四リンP4O10:どちらもPと Oはアルファベット)の形で煙が発生する。これが致死性である。(日本語にする際、用語類はウィキペディアで確認しました。)

追記:P4O10について
P4O10については、英文の情報の多くが下記2件の情報に依拠しているようです。

まず、
http://ptcl.chem.ox.ac.uk/MSDS/PH/phosphorus_pentoxide.html
を参照したところ、

Stable, but reacts violently with water, alcohols, metals, sodium, potassium, ammonia, oxidizing agents, HF, peroxides, magnesium, strong bases.

→安定した物質であるが、水、アルコール、金属、ナトリウム、カリウム、アンモジア、酸化剤、HF(? hafnium?)、過酸化物(過酸化水素)、マグネシウム、強塩基と激しく反応する



次に、
http://www.sciencelab.com/msds.php?msdsId=9924773
を参照したところ、

Potential Acute Health Effects:
Extremely hazardous in case of skin contact (irritant), of eye contact (irritant). Very hazardous in case of ingestion, of inhalation (lung irritant). Hazardous in case of skin contact (corrosive). The amount of tissue damage depends on length of contact. Eye contact can result in corneal damage or blindness. Skin contact can produce inflammation and blistering. Severe over-exposure can produce lung damage, choking, unconsciousness or death. Inflammation of the eye is characterized by redness, watering, and itching. Skin inflammation is characterized by itching, scaling, reddening, or, occasionally, blistering.

→皮膚に触れると極度に有害(刺激性)、目に触れても極度に有害(刺激性)。
摂取した場合は非常に有害、吸い込んだ場合も非常に有害(肺に刺激性)。
皮膚に触れると有害(腐食性)。
組織のダメージの量は、接触している長さに応じる。
目に触れると角膜損傷もしくは失明に至る場合がある。
皮膚に触れると炎症・水疱を生じさせる場合がある。
ひどく過度にさらされると(<直訳:severe over-exposure)肺のダメージ、呼吸困難、意識喪失もしくは死を生じさせる場合がある。
目の炎症は充血、なみだ目、ちくちくした痛み(かゆみ)に特徴がある。
皮膚の炎症はちくちくした痛み(かゆみ)、皮むけ、あるいは時として水疱に特徴がある。



また、コメント欄で「冶金系」さんにご教示いただいたソースとして:
http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0545c.html (←P4O10について必見ページのひとつ)
# 「冶金系」さん、ありがとうございました!
(後略)

つまりは世間で流布している話では空中に打ち上げられて比較的薄い白リン化合物のガスを撒く発煙弾と人が沢山いる地上に焼夷性の強い純粋な白リンに近い物を打ち込むのとでは本質的に意味が違うという基本的な部分が欠落してしまっている訳です。

地上にこのような危険物質を大量に打ち込むということ自体が道徳上非常識であるし、戦略としても無差別殺戮を手段とした前近代的な征服行為でないならば、無意味であると私は思うのですが。

六十数年前に我々日本人も「無差別殺戮を目的とした征服行為」を既に行われています。殆どの都市が米軍の爆撃機によって投下された焼夷弾によって焼き払われた。
あの時の米軍の目的も「無差別爆撃で一般市民の戦意を削ぎ、恐怖を植え付け、一般市民を服従させること」にあった。

我々は、何故あのような無差別爆撃を正当化して擁護したり無視したりせねばならないのか?
ファルージャ攻略戦で使われた白リン弾は、61年前の東京大空襲などで落された焼夷弾や、広島・長崎に落された原爆と等価であるのだと言う事に何故、気づかないのか?
我々と、ファルージャの人々は奇遇な縁でつながっている。*2

我々は、そのことを切実に受け止めなければならないのでは無いでしょうか?

*1:彼らと軍オタを同一視するのは軍オタの最たる、軍事分析や軍事ジャーナリズムのプロの皆さんに対して失礼だヽ(`ー´)ノ

*2:もちろん、日本軍が最初に戦略爆撃を行った重慶の人々とも。である。