月よお前が悪いから…のアーカイブ

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ミサイル防衛のために通常防衛が疎かになるのは如何なものか

少し古い記事ですが…

http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/10/26/20041026ddm005010132000c.html

防衛大綱:策定作業、本格化 財務省VS防衛庁陸自定員めぐり対立−−安保会議

 ◇財務省、4万人の削減を/防衛庁、7000人増員要求−−陸自定員

 政府は25日、首相官邸安全保障会議(議長・小泉純一郎首相)を開き、新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の策定作業を本格化させた。しかし、陸上自衛隊の4万人削減を打ち出し財政再建を目指す財務省と、定数増に加えてミサイル防衛(MD)本格導入のため防衛費増額を求める防衛庁との溝は深い。政府は11月末に新防衛大綱を、年末までに「中期防衛力整備計画」(中期防)を決定する予定だが、早くも大臣レベルの政治決着にもつれ込むとの見方が出ている。【古本陽荘】

 「来年度も一般歳出を実質的に前年度以下に抑える。そういう中での話です」

 首相は22日、防衛費が歳出削減の例外ではないことを示唆した。この発言は前回21日の安全保障会議での新大綱をめぐる議論を踏まえたものと受け止められた。

 財務省防衛庁の対立の中で最大の焦点は陸自の定数削減問題。財務省は「公共事業や文教費などが歳出削減の対象になる中、防衛費も例外ではない」との立場を鮮明にし、現大綱の16万人から10年間で4万人削減し12万人とするように求めている。旧ソ連の脅威がなくなったため、北海道の4個師団・旅団を1個師団に改編。戦車の数も現行の900両から425両に大幅に削減*1するように提示している。

 これに対し、防衛庁は常備自衛官を7000人増員し、16万2000人の定員を要求。「山間部の多い日本の地形を考えると、あらかじめ部隊を分散させておかないと即応体制は無理」との考えから、テロやゲリラといった「新たな脅威」に対応するには増員が必要との主張だ。

 一方、新大綱に基づいて策定される中期防(05〜09年度)総額について、防衛庁はMD導入費用などを理由に25兆5000億円を要求。これに対し、財務省防衛庁の04年度予算を基準に中期防を算出すると24兆3800億円が上限と主張している。昨年12月、MD導入の閣議決定の際、「防衛庁と官邸の間に、MD増額分は陸海空の削減分を充てるとの約束があった」(政府関係者)との証言もあり、財務省はMDが防衛費増額の理由にはならないとの立場だ。
毎日新聞 2004年10月26日 東京朝刊

この記事から浮かびあがる問題として二つの事があります。

  1. 現段階でのMD(ミサイル防衛)の導入は技術的な未熟さから見て明らかな無駄遣いであると同時に、政治的な波及効果を考えると東南アジア・極東の戦略バランスを崩す愚挙ではないか?
  2. 通常部隊、特に陸上自衛隊の大幅かつ急激な削減は災害を含めた非常事態に対しての対応能力を著しく損ねることになるのではないか?

前者については、MDと言うシステム*2自体が技術的に未熟であり、
例えば防空に関して言うならば、現在のペトリオットPAC-2からペトリオットPAC-3+ERINT弾への転換によって航空機の脅威からの防御範囲が面積オーダでPAC-2の0.8%にまで狭まり、政治的レイアで決着の付き難い航空機による脅威への対処が難しくなり、航空機による威嚇行為を容易にする上に、只でも進んでいる東南アジアの軍拡競争を弾道弾のレベルに迄エスカレートさせる危険性が出てくる*3
政治的な側面から言うならばMD導入は「配備していれば弾道弾を撃たれても安心」と言う慢心を政治的に蔓延させる危険があり、外交を誤る…さも、外交的に圧倒的に優位なカードを中国・ロシアに対して持ったと勘違いする…*4危険度が増す。

後者については、言うまでもないでしょう。
確かに現状の北方偏重には問題があり、二個師団程度を本州・九州に再配備して緊急展開可能な形に改編する必要があると考えますが、財務省案の三個師団・旅団の削減は将来の国内の非常事態に対処する能力を喪失する危険が非常に高いと考えます。
削減するならば、ヘリ空母だMDだなんだと暴走して、アメリカ海軍の下請けと化している海上自衛隊の装備体系や作戦行動の見直しから入るべきだし、
それ以前に当の財務省が許認可の首根っこを握っている三自衛隊の装備・資材の調達方法の余りに大きい無駄をどうにかしてから軍事計画の見直しに入るのが筋ではないかと思うのですが。

*1:Artane.注:この戦車の車輌数だと、北海道の90式戦車を若干数加える程度の戦車以外はいらないという計算になり、戦車の削減案としていささか過激過ぎる

*2:の一部である弾道弾迎撃ミサイルシステムですら

*3:逆に言うと、政治的なレイアで弾道弾を撃たせない・これ以上増やさない事は外交をきちんとやっていれば難しくない

*4:北朝鮮は日本に到達する弾道弾の戦力としてはそもそも無視してもよい程度の開発能力しかない