月よお前が悪いから…のアーカイブ

http://d.hatena.ne.jp/artane/ がサーバの関係で消えるようなので、アーカイブします。基本更新しません。

例によって産経新聞が性教育叩きに走る

03/27づけのlivedoorニュース経由のJ-CAST配信ニュースより。

http://news.livedoor.com/article/detail/3095064/

「性に奔放な茨城少女」 タイトルに県教育庁おかんむり

茨城県教育庁は2007年4月から青少年の性教育の取り組みを強化する。高校生を中心とした性交渉の経験の若年化を受けて、07年8月に同県で「第30回日本産婦人科医会性教育指導セミナー」が開催されることもあり、教育界と医療界が連携を組んだ。これについて産経新聞が「性に奔放な茨城少女」というタイトルの記事をウェブ上に掲載したため、教育庁は「心外だ」とおかんむりだ。

高校2年女子が体験した割合は35.7%

茨城県教育庁は、2007年8月5日につくば市で開催するこの「性教育セミナー」の一環として、07年度から県内の全県立高校に産婦人科医や助産婦などの性教育の専門家を招き、性に関する講演を行う。同県教育庁保健体育課は、各校に打診中としながらも、「命の大切さと相手を思いやる心をはぐくむ取り組みで、性感染症などを予防する狙いもある」としている。

同県教育庁保健体育課によると、県内の高校2年生の女子生徒が性交渉を体験した割合は2003年の調べで35.7%*1教育庁によれば「他県と比べて特に高いというわけではない」としながらも、近年の性交渉の低年齢化を考慮した取り組みに力を入れ、「避妊」や「性感染症予防」などを中心に取り組む。

こうした茨城県の取り組みについて産経新聞は07年3月25日に報じたが、ウェブ版の見出しは「性に奔放な茨城少女… 県が性教育を強力推進」となっていた

このことを同県教育庁保健体育課にJ-CASTニュースが指摘したところ、

「そんな見出しなんですか!?それは心外ですね。ほかの県とそれほど変わりがないんですから」

と驚きとともに不快感を示した。

「茨城だけということはないです」

危機意識、(性教育を)やらなくてはいけないという意識はあります。全国で(高校生などの)性感染症や性交渉が増えているという実態がありますから。しかし、茨城だけということはないです」

産経新聞では、この見出しとともに「(茨城)県内の児童、生徒の性交渉体験率がやや高い」という一文まで添えられている。

同課の担当者は、

「あくまで仮の話ですが、(茨城が飛びぬけて高い)そんなことがあったら『思いやる心をはぐくむ』なんてこと言ってられないですよ。もっと警報的にやらないといけなくなる

と半ばあきれ、その見出しのついた記事がどこにあるのかJ-CASTニュース記者にたずねる一幕もあった。

2007年03月27日19時45分

で、その元記事:

http://www.sankei.co.jp/chiho/ibaraki/070325/ibr070325000.htm

性に奔放な茨城少女… 県が性教育を強力推進

県は平成19年度から県内の青少年の性教育を強力に推進する。県内の児童、生徒の性交渉体験率が全国的にみてやや高いこともあり、「自分や他者の価値を尊重し、相手を思いやる心を磨く」(教育庁保健体育課)ことが主眼だ。今年8月にはつくば市で「第30回日本産婦人科医会性教育指導セミナー全国大会」を開催する予定で、教育界と医療界がスクラムを組んで性教育を推し進める。

性教育推進事業は平成18年10月に就任した石渡千恵子県教育委員長が主導した。長い産婦人科勤務経験を持つ石渡委員長は定例教育委員会などの場で、青少年の性の乱れや教育の重要性を常々強調しており、19年度から新たな施策に着手することになった。

主な事業内容は県内すべての県立高校に産婦人科医や助産師を講師に招き、性に関する講演会を開催する。性教育の専門家から性に関する正しい知識を直接学ぶことで、「命の大切さを自覚し、相手を思いやる心をはぐくむ機会としたい」(同)考えだ。

教職員の性に関する指導力向上も大きな課題。小中高の全教員を対象に学識経験者を講師として性教育に関する研修会を開催し、児童、生徒が生涯を通して自らの健康を適切に管理し改善していく資質や能力を育成するための教員の指導力を高める。

また、全県立高校の生徒に対し、正しい性知識、命の大切さや相手を思いやる心の大切を伝えるメッセージを届け、「望ましい行動や意思決定の能力を高めさせたい」(同)方針だ。既に配布している性教育啓発資料を生徒に引き続き徹底させる。

 8月に開催する全国大会(つくば国際会議場)には中高の教職員200人と保護者50人を招き、性教育への重要性を改めて訴え、理解を深めてもらう。

こうした性教育推進の背景には青少年の性の乱れに懸念を示している石渡委員長の強い意向と県内の児童、生徒の性交渉の低年齢化が要因にある。

高校2年の女子生徒の性交渉体験率は35.7%(平成15年度調べ)に達している。この女子生徒が初めて性交渉を行った年次を調べたところ、高校1年が29.1%、中学3年が11.4%と比較的若い時期に性交渉を行っている実態が浮き彫りになっている。

 ただ、調査はあくまでも申告制で実態はさらに性交渉率は高いとの指摘も大きい。県では19年度から県立高校で道徳教育を全国で初めて導入することもあり、県教育庁学校保健担当は「性を語る上で、望ましい男女間、人と人とのつながりは欠かせない。性感染症を避けるためにも、青少年の性交渉は抑制していく方向で指導していきたい」と話している。

(2007/03/25 03:41)

さて、要点をマークアップしましたが、この産経新聞の記事の意図する所は明白で、「実態にあった性教育」を行おうとしている石渡千恵子茨城県教育委員長を「過激な性教育」=「純潔教育に反した”性の乱れを推進”する教育」を職権濫用して行う者としてバッシングの対象にし、右翼などの攻撃対象に祭りあげて茨城県の行政から追放しようとしているあたりにあります。

このような馬鹿な連中が東京都や神奈川県や埼玉県で知事や県議会や都議会の議員や諮問会議の委員などをやって、行政の目に蓋をさせ、男女共に自衛する術を教えることすら権力で潰し*2、「フィルタリング」や「有害図書規制」、あまつさえと「不良行為の抑止」と称して子供たちの行動の自由や判断力を不当に奪う事を何ら科学的でない、自己の思い込みと利権確保のために*3正当化しつづけ、既成事実の積み重ねで押し通してきた。

その結果、何が起こったか…例えば東京・渋谷での地元の産婦人科医などによる調査では、渋谷に集まる10代後半〜20代前半の男女の三割近く(特に20代前半の女性に顕著なようですが)が何らかの性感染症にかかっており、それを防御すること(=コンドームを使うこと)すら調査対象の人の殆どが知らなかったと言う惨状につなっている訳です。

日本は所謂「先進国」の中で、唯一HIV感染が未だ爆発的に増加している国です。それを引き起こしたのは、若者の性という物は不潔である。として押し殺して、なかったことにしてきた敗戦から80年代半ばまでの「世間」の「空気」にあるし、その延長線上に「純潔教育」が一定の支持を得てしまう情勢があり、それ故に、90年代後半まで一部の先進的な学校を除いて、アリバイ的な性教育しか行われてこなかった。

今や、日本は第二のルーマニアと化している。と云って過言ではないでしょう。*4

そういう事を考えると茨城県の対応は真っ当過ぎるくらい真っ当であり、非を問うこと自体がおかしなことではないでしょうか。

このような真面目な性教育の圧殺を行ってきた行政の長に、鉄槌を下すべし。

*1:この数字は自己申告としては妥当、多分三割から五割くらいは実際には多いでしょう

*2:実際に知能障害のある子供たちにわかりやすく性教育を教えることで、彼ら・彼女らが騙されないようにしようと言う都立の養護学校の教育現場の努力を、石原都知事や土屋都議を始めとする、「純潔教育」信奉者たちが潰しに掛かり、その教師は退職する羽目になった事件が起きている

*3:東京都の竹花元副知事や神奈川県の松沢成文知事、埼玉県の上田知事なんかがいい例です、マッチポンプに躍起なのですから

*4:ルーマニアチャウシェスク政権下でHIVは「あってはならない」とされて、何らHIVに対する対応が行われてこなかった。そのことにより、これはルーマニアに限らず旧東側諸国の少なくない国々でも共通している所がありますが、非常に深刻なHIV感染者率になっている訳で

さて、我らが松沢しげふみ神奈川県知事の性教育に対する見解は…?

この記事を見ていて神奈川県の性教育行政について調べてみましたが、あまり活発ではないようで…*1

で、松沢成文神奈川県知事の定例記者会見の方を調べてみましたが…

http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/hisyo/chiji/kaiken/h16/040924.htm

(青少年の健全育成について)

Q: 青少年の問題ですが、先日東京都の方で、中学生の性行為を条例などで制限を加えようではないかという議論があったそうなのですが、首都圏で青少年の問題を共通して取り組んでいくべきだと普段おっしゃっている知事として、神奈川県でもそうした議論をするお考えはあるでしょうか。

A: 青少年保護育成条例の改正に向けて、今、庁内の議論をしております。それは、できるだけ幅広い形で、議論をしておりまして、ただ、私、東京がどういう内容で提案されたのかというのは、新聞記事があったんでしょうが、読んでいないんで分からないんですけれども、幅広い内容で青少年の保護育成についての議論はしていきたいと思っています。ただ性教育という問題、あるいは性行為ですか、を禁止すると・・・。 

Q: 話し合いでそんな意見が出たと・・・。

A: その問題にしても幅広い範囲で検討していかないと、もちろんプライバシーの問題もあるでしょうし、あるいは結婚制限年齢とか、そういう問題もあるでしょうし、幅広い議論をした中で、方向性を見出していかなければいけない問題だと思います。今、具体的な意見は持っていませんが、もう少し勉強させていただきたいと思います。

とお茶を濁していますが、例の「ゲームへのトンデモ規制発言」などで未だに炎上中の松沢知事のblog*2のコメントで「性教育の見直しなどの方が有害図書などの規制よりも重要ではないか」と言う風になんどか書き込まれていまして、実際に県知事に質問状を出された方がいらっしゃったようです。

http://newmoon1.bblog.jp/entry/220542/

Q17.ゲーム規制よりも、地域社会の育成や性教育の見直し、家庭問題、世代を超えた交流の推進などの問題に取り組んだ方がよっぽど有益であるとの意見が多く上がっているが、松沢氏はどう思うのか。

>17番目のご質問ですが、地域社会の育成や性教育の見直し、家庭問題、世代を超えた交流の促進などの問題につきましては、ご指摘のとおり重要な課題であり、同様に取り組んでまいりたいと考えています。
>次代を担う青少年が健やかに成長することは県民すべての願いであり、青少年が健全な環境の中で育てられることが望ましいことはいうまでもありません。そのためには、青少年を取り巻く望ましくない社会環境から青少年を保護し、青少年が心身ともに健全に成長するよう図ることが求められています。そうした取組のひとつとして、神奈川県青少年保護育成条例では、青少年の性的な感情を著しく刺激したり、残虐性を甚だしく誘発し、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある図書類を「有害図書類」として指定し、青少年に対して「有害図書類」を販売したり、貸し付けたりすることを禁止しています。この「図書類」には、ゲームソフトのように電子情報を内蔵したDVD等も含まれていますが、ゲームソフトにつきましては、その操作性などの問題から具体的な指定に至っていなかったため、今回の審査により指定を行ったところです。
>×××様におかれましても、こうした趣旨をご理解いただき青少年を取り巻く社会環境の健全化、青少年の健全育成にお力添えくださいますようお願いいたします。参考までに、今回回答いたしました事柄につきまして、さらに詳しいお問い合わせがある場合には、県民部青少年課地域環境班 尾崎(電話 045- 210-1111内線3848)で担当しておりますことを申し添えます。県では、神奈川の新しい時代を切り開き、活力ある地域社会をつくるため、さまざまな課題に取り組んでおります。これからも、あらゆる機会をとらえて皆様のご意見をおききし、明日の神奈川づくりを皆様とともに進めてまいりたいと考えております。晩夏の候、ご健康に留意され、お過ごしください。

平成17年8月19日 ×××様
神奈川県知事   松 沢 成 文
整理番号 №××× 県民部広報県民課わたしの提案班 加賀美
〒231−8588 横浜市中区日本大通
電話(045)210-1111 内線3672・3673 ファクス(045)210-8833

と言うことで、文脈から推測するに、波風を立てないために表立っては表明していないものの、松沢知事個人は「過激な性教育」と呼ばれる、実状を反映した性教育よりも、「有害図書」や「不良行為」の刑事罰をふくめた取締りの方が青少年の「性の乱れ」を正すのに有効であると考えている節があるように思えます。

これをどうとらえるかは、皆様にお任せしますが、松沢知事流の神奈川県政では、本人や親への刑事罰を含んだ青少年への政治的・行政的抑圧により「有害な環境」を排除することによる性行動や性衝動の抑止が重要で、性の自己決定権や自衛権については重要と見ていないというのが私の見解です。

兎にも角にも、4/8は神奈川県知事選挙と神奈川県議会議員選挙の投票日です。神奈川県民の皆様においては、棄権せずに自分なりに賢明な選択を行って頂きたいと思います…。

(03/29)社民党、松沢知事支持の神奈川県連方針を撤回する英断(決定は3/23に行われた模様)

d:id:artane:20070321のコメント欄 ( http://d.hatena.ne.jp/artane/20070321#c1175125148 ) にて初めて知りましたが…お恥ずかしい話ですが。

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/news/20070324k0000m010129000c.html

神奈川知事選:松沢氏の都知事選応援、民・社に波紋

神奈川県知事選で民主、社民両党の支援を受ける現職の松沢成文氏が告示日の22日、東京都知事選で自民、公明両党の支援を受ける現職の石原慎太郎氏と相互に応援演説を行ったこと*1が波紋を広げている。
社民党福島瑞穂党首は23日の記者会見で「石原氏を応援する松沢氏は支持できない」と述べ、党県連が決めた支持方針を撤回する考えを表明した。

松沢氏が衆院議員時代に所属していた民主党鳩山由紀夫幹事長も同日の会見で「はなはだ残念だ」と不快感を表明したが、松沢氏支援は継続する考えを示した。【山田夢留】

毎日新聞 2007年3月23日 21時48分

社民党中央執行部の大英断である。と感謝します。

通常は地方の方針を追認するに過ぎないであろう執行部としても、流石に松沢神奈川県知事が石原慎太郎東京都知事と選挙で連携する*2のは党の姿勢自体を問われかねないということで葛藤した末に決断したのでしょうね。

福島党首始め、社民党中央執行部の皆様に、感謝。そして、

松沢支持を撤回した社民と松沢を支持しつづける民主、両党の県会議員、どちらを選ぶか*3、神奈川県の皆さんが4/8の県議会議員選挙で誰を選ぶかの一つの基準になるのではないかと思います

*1:http://d.hatena.ne.jp/artane/20070321#1174509846

*2:実際には政策レベルでもずぶずぶなのですが

*3:そもそも、社民の候補が出ていない地域の場合にはネットや共産党になるのですがorz