月よお前が悪いから…のアーカイブ

http://d.hatena.ne.jp/artane/ がサーバの関係で消えるようなので、アーカイブします。基本更新しません。

さあ、天まで昇ろう…

シゲル*1、見事に復帰してくれたな…50近くなって再婚したのが効いたな…

で、今回は別の話題から*2
(↓は、ケータイから読むこと考えてセパレータ代わりに小分けしました。04:40)

*1:アナーキー/仲野茂BAND・現SDR(セドロ) http://sdr.rdy.jp/ ヴォーカル

*2:はたしてきょうのこりをかくかどうかきめていない

「アニメの殿堂」にタカるコンテンツブローカー

国立メディア芸術総合センター(仮称)=通称「アニメの殿堂」ですが、麻生内閣の「緊急経済対策」が実は霞ヶ関の役人と関連する業界の上の方が焼け肥るための予算ばかりで、要求額の算定根拠も経済効果もマトモに示されないままに請求されてそのまま通されようとしてる事の象徴的に扱われていて*1、予算執行止める止めないで大モメしていますが、こんな論文が8日付で日経IT+に載りました。


http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMIT12000008062009

アニメの殿堂」ほど正しい予算の使い方はない

 5月29日に14兆円規模の 2009年度補正予算が国会で成立したが、野党を中心に「無駄遣い」「バラマキ」批判が続いている。特に無駄遣いの象徴とされたのが事業費117億円の「アニメの殿堂」だが、見当違いも甚だしい。むしろ、無駄遣いとバラマキばかりの補正予算の中では数少ない真っ当な予算と評価すべきなのである。この問題を巡る政策論争と報道を見ていると、日本のクリエイティブ産業の将来は暗いと言わざるを得ない。(岸博幸

(中略)

■文化は政府が保護・発展させるべき

 アニメやマンガは単なる娯楽ではない。今や文化なのである。文化である以上、政府が維持・保護・発展に関与するのは当然である。ハリウッドの有名監督が来日して日本のアニメやマンガを堪能できる場所が本屋しかないというのは、国として恥ずかしいと思うべきである。

 同じような過ちが過去の映画文化にもあったことを思い出してほしい。日本映画の巨匠である黒沢監督が不遇の時代、彼を応援していたのは日本人や日本政府ではなく、スピルバーグなどの外国人だったのである。そして、同じことがアニメの世界で起きている。優秀な人材はどんどんハリウッドに流出してしまう。アニメ映画で有名な米ピクサー・アニメーション・スタジオでは数十人の日本人が働いているそうである。

(中略)
 しかし、今回の「アニメの殿堂」騒ぎを見て、改めて財務省が可哀想になってしまった。財務省補正予算の総額を大きくしろという政治の要請と、知恵のない各省庁からの陳腐な予算要求の狭間で、短い時間の間にかなり不本意な予算査定を強いられたはずである。それだけでも気の毒だが、それに加え、補正予算批判の筆頭で正しい予算があげつらわれるのだから、踏んだり蹴ったりだろう。日本を悪くしているのは官僚だけではない。政治の貧困がそれを加速しているのである。

[2009年6月8日]

*1:先週と今週の「週刊朝日」は必読!!と言うか、最近イケイケドンドンで政権批判やってるのが凄い…買え。

さて、ここで、この岸氏の論文の問題に話を戻します。

この岸氏が取締役をやっているエイベックス、一般的には浜崎あゆみなどの音楽で知られていますが、多くのアニメに出資して制作の元締めとなっています。*1

そういう企業にバリバリのキャリア官僚でしかも今や郵政民営化や金融政策にからんで疑惑の総合商社と化している竹中平蔵元金融担当大臣/総務大臣の側近を勤めた方が天下って、そして国に対して「アニメの殿堂コンテンツ政策でお金を出さなければ人材がいなくなる」と言ってる。

そう考えると、この論文というのは一見現場にお金落とすように見えるけど、実際には今まで制作会社へのお金をケチって荒稼ぎしてきたコンテンツ産業が国の緊急経済対策に乗じて国税コンテンツ産業の制作現場の両方から更に生き血を啜ろうと手招きしてるようにしか見えない。

本当に人材流出を防ぎたいのならば、現場の人間が長時間労働せずともきちんとご飯をたべられて家も保証され*2きちんと医療を受けられる。そういう風にコンテンツビジネスでのお金の配分を抜本的に見直すべきなのではないでしょうか。
今まで現場にタカって上前跳ねてきた側の人間がこんなこと書いても信用ならない・自分たちだけお金が欲しいとねだってるようにしかみえない。

*1:ここ参照 http://avexmovie.jp/anime/index.php

*2:アニメーターだというだけで家を借りられないと言うことも非常に多い

何か、ものすごく後味が悪いというか、実際に死線を歩いてる現場のアニメータやプログラマ・彼らに仕事を振ってる末端の制作会社についてまったく言及されていないで、ハコモノである「アニメの殿堂」があることが末端の技能職*1の海外流出を防ぐというあたりの論理展開に非常に憤慨しました。が、経歴を読むと


  • 筆者紹介-

岸 博幸(きし ひろゆき)

慶応大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構准教授、エイベックス取締役

略歴

 1962年、東京都生まれ。一橋大学経済卒、コロンビア大学ビジネススクール
業(MBA)。86年、通商産業省(現・経済産業省)入省。
朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)、資源エネルギー庁内閣官房IT担当室などを経て、
当時の竹中平蔵大臣の秘書官に就任。同大臣の側近として、不良債権処理、郵政民営化など構造改革の立案・実行に携わる。98〜00年に坂本龍一氏らとともに設立したメディアアーティスト協会(MAA)の事務局長を兼職するなど、ボランティアで音楽、アニメ等のコンテンツビジネスのプロデュースに関与。 2004年から慶応大学助教授を兼任。06年、小泉内閣の終焉とともに経産省を退職し、慶応大学助教授(デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構)に就任。07年から現職。

要は、コロンビア大学帰りの経産省のキャリア官僚が竹中「参考人招致バックレ」元財務相総務相の秘書官を経てエイベックスに天下った。
と言うご経歴の持ち主で、そのある意味新自由主義経済バリバリの*2コンテンツ産業ホープが国にお金というか「アニメの殿堂」を作るときに出てくるお金や利権を非常に待ち望んでるのは片方では国に頼らない・小さな政府を指向する新自由主義経済イデオロギーに反するように見えますが、しかし、ミルトン・フリードマンやミハイル・ホドルコフスキーなどがそうであったように、新自由主義イデオロギーとは実は小さな政府に改革する事を粉飾して、旧来国家財産を持っていた者から少数の新興勢力が一部の政治勢力と結託して、その国家財産を旧勢力から奪取し独占して離さないでも何ら違法でも不道徳でもないように国家全体を「改革」するイデオロギーである。と再定義し*3、その上でこの岸氏がコンテンツ利権を国から引き出そうと腐心してこの様な論文を出してくる「必死さ」を考えると、非常に新自由主義者らしい唾棄すべき行動と論文であると言えると思います。

*1:アニメータやプログラマ

*2:小泉内閣終焉時点で慶応大に行ったのは竹中のコネですかね

*3:ユコスをはじめとするロシアのオリガルヒがィエリツィン政権に取り入って操作することでその国富を独占し・人民を思考停止に追い込んだ末にチェチェンなどの民族撲滅戦争に突入・そしてィエリツィンの後釜に据えたプーチンに裏切られてシベリア送りや国外亡命へとなったソ連崩壊前夜からの十数年間の狂想曲がよく目立ちますが、実際にはミルトン・フリードマンアメリカの資本家がチリのピノチェト軍事独裁政権と結託して恐怖政治を布いていた1970年代にまで遡れます。

アニメーションにせよゲームにせよ、その制作現場が低賃金・超長時間労働に支えられていることは今でこそ広く知られていて、その中ではアニメーターもプログラマーも声優もその優れた仕事の中身やそれが産み出す「富」に応じた賃金も著作権も得ることが出来ていない。これはゲームやアニメに限らず大半の商業的な芸能活動や創作活動がそうであるのですが。*1

その直上にある制作会社もお金がなくて自転車操業ばかりが目立つ。

このあたりの構図は多くのアニオタの人たちが言及していますが、その一端としてWinnyで流出した制作会社の制作進行の資料。と言う物があります。

http://www.kajisoku-f-2.com/dd/img2-03/img1156_w02.jpg

これは、「バンブーブレード」と言う2007年にテレビ東京系で深夜にやったアニメの制作予算表ですが、

  • 制作会社に対しては半年間・26本の30分アニメの制作に当たって、一本あたり955万程度の予算
  1. アニメの筋書きを決める構成には一本あたり4万6千円
  2. 脚本へは一本あたり20万
  3. アニメの売れ行きを半分以上決めてしまうキャラクターデザイナーには3万8千円
  4. 中身の大半を決める絵コンテ・演出にはそれぞれ25万
  5. アニメの中身を描く原画には総予算で120万・一カットあたり2千円
  6. 原画を線画の動きに清書する動画は一枚210円・それに色を塗ったりする仕上げは一枚190円

それぞれの工程、一日で終わる物ではなく一カットやるのに数日以上かかるのもざらで、特に演出までの上流工程では二ヶ月半程度の一本の制作期間につきっきりになるのでまったく割にあっていない。

*1:多くの音楽家や小説家などが著作権の保護の恩恵を受けられてず・稼ぎに見合った報酬を受け取れていない現状も、又ある。

その上、制作現場や制作会社が著作権の一部を持ってるのは極めて稀で、アニメのグッズやDVDなどが売れても全く利益が増えない。
…このように、非常に安い値段で制作会社が受注してそれを下請けである制作現場に安く仕事を振ってるのは公正取引委員会も非常に問題視していて、それは何故かというと制作会社に発注する出資者・DVDなどの出資者が絶対に損しないように・大きな利益が返ってくるように出資ファンドが組まれているのが最近のコンテンツ制作の情況で、制作会社は実際にコンテンツに魂を吹き込みにもかかわらず大抵はコンテンツに対して発言権を持たせられていない=取引上の優位性を盾に不利益を強いられているからです。

一例:


http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0407/27/news076.html

初のアニメファンドで資金調達 個人向けに1口5万円から
GONZOTVシリーズ次回作「バジリスク」をファンド化し、2億4000万円を集める。DVD販売本数が償還額の決め手になるが、そのそろばん勘定は?

 OVA青の6号」などで知られるアニメ製作会社GONZO(ゴンゾ)のTVアニメ次回作が、個人投資家向けにファンド化される。ゲームやアイドルのファンド化はこれまでにもあった(関連記事1、関連記事2)が、アニメは国内初だ。

 ファンドは「アニメファンド! バジリスク匿名組合」。ゴンゾと、トヨタ自動車などが出資するジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC)、楽天証券ジェット証券の4社で運営する。


(以下略)

このように一般からの投資を募る例は特殊で、大抵は大企業や投資ファンドとテレビ局・広告代理店・原作がついてるときは原作の出版権を持つ出版社が投資の主体となって数億〜十数億の出資を行って彼らが収益を最優先で回収する形になってきました。*1

*1:この流れは「新世紀エヴァンゲリオン」が制作委員会形式でテレビアニメを制作して数十億規模の稼ぎを上げる化け物アニメとなった事から有望な投資先としてアニメなどが企業に目をつけられた事を注意。